エレファントソング

死期を悟った象さんは、独り逸れ旅に出る。。
有名なハナシですが、真偽はどーでもいいね。
家族や仲間を大切にする象が、死期を悟って
自ずから身を退く潔さってのは素敵だわね。


”エレファントソング”のDVDをやっと手に入れた。
”ZAZIE”と”BeRLiN”は偶然に中古ビデオ屋
レンタル落ちを購入できててね、特に”ZAZIE”は
名作でもないし、ホントにラッキーな発見だった。
当時、甥っ子がよく古本屋とかに誘ってくれてて
その時に見つけたんだっけか、ビデオだけども
テレビの深夜映画の放送を録画したテープを
大事に観倒してたから、嬉しかたすなぁ(^-^)

俳優としてNHKのドラマとか三井のリハウスでの
お父さん役とかで知られてる利重剛の監督作品が
昔から大好きなのです、映画監督として大好きで。
”ZAZIE”〜”エレファントソング”〜”BeRLiN”は
利重剛の映画監督としての粗雑だがコアな部分が
思いっきし詰め込まれてるよに感じてましてね、
大好きなのデスわ。どんな予算を掛けた映画より
どんなスターが出てる映画より脊髄が反射するな。
”クロエ”になると少し違う気がしたのはなんだろ?


何気ない日常を描いている映画ってのが好きで、
何か起きなくても、何か起こってるのが日々日常で
その中で、どう”やってく”のかを描く脚本てのは、
アクションや事件という”見せ場”に頼れないだけ
起承転結の起伏も平坦になりがちで、脚本の
コアの部分がしっかり組み立てられていないと
まったく何も伝わって来ない映画になってしまう、
そーゆー難しさがあっても、ソレでも日常の中で
登場人物たちの関係性を描こうとする姿勢って
映画とか映像、物語がホントに好きじゃないと
やってらんないと思うんだな、そーゆーのが好き。


以前に利重監督が”エレファントソング”の解説で
『約束だから死体を運んで埋めるだけの映画』
って云ってたっけ。(NHK土曜ソリトンだっけ?)
約束だからね、社会的には死体遺棄っていう
事件かもしれない出来事でも、その関係性から
生じた約束のほーが大事なのかもしれないって
そーいった個別のディテールやら感性を大事に
描こうとする映画って自己中になりがちだけど、
利重監督のセンスってのは、そうならない優しさ
があるんだわなぁ、判らない人は置き去られる、
そんな映画が好きなんだな、観る側の感性も
問われる脚本や映像なんだろーと思うんだな。


『約束でもしてなきゃ生きていけないの』って
”ZAZIE”の中でもそういった台詞があってね、
利重監督も”どっかで何かと約束してる”って
語ってたけども、人の関係性てのの基本は
”約束”なのかもしれないなぁ、ソレは利得とか
利害の約束ではなくて、関係性の中で生じる
信頼みたいなモンなのかもなぁ、ソレを映画で
描くのは、個別の関係性に入り込める余韻を残して
表現しなきゃならない難しさがハンパないわぁ。




この数年つーか、NHKの朝ドラを観てても
あんまりピンと来ないのは、朝からドタバタと
いろいろ起こり過ぎる感があるのがイヤだ。
毎朝そんないろいろ起きなくてもいいじゃん?
夢とか目標とか、そんなん誰もが四六時中
掲げてられるワケでもないんだし、日常は。
日常を描きつつ、日常をおざなりにしてる感
が強いんだな、ここ数年の朝ドラってヤツは。
なんか、前向きとか感動とか夢とか希望とか
そんなモノまで、数字(レーティング)やらの
要素しちゃってるこの時代だからこそ、NHK
でしか出来ないよーな作品をやって欲しいね。
何も起きない日常、小津安二郎のよーな作品。
主人公が何かを達成するとかではない脚本、
ストーリーの展開でどんどん足し算がされる
描写ではなく、削ぎ落として引き算される映像、
そんな作品があっても良いんじゃないのかな。
削ぎ落とされて何が残るか、ソレが大事でしょ。


ドラマだけでもなく、報道でも足し算の傾向が
強くなってきてるし、刺激を求める常習性か。
情報が少ないと”ネタ”の価値を保持する為に
憶測とウワサ噺をタレ流して”報道”ってんだ、
その足し算の為に信頼を切り売りしてねーか?
メディアへの信頼てのは、情報の確度と共に
情報を扱う姿勢を問われる部分が多大だろに。


昔から感じてんですけどね、泣いてる被写体を
アップの寄りの映像で映すってのは、まったく
不快なんだけどもね、アレはなんなんだろか?
感情を表現している描写かもしれないけども、
あまりに安易だなと感じて嫌悪感を持つねぇ。
悲しみや怒りで泣いてる人を”寄りの映像”で
捉えるってのは、他者感覚が乏しいと感じる。
他者感覚を持てない報道てのはエゴだわな。
昔、東欧のドキュメンタリーを観た時に感じた
冷たいまでの客観性と暖かい疎外感ってのは
悲しい場面の”引きの映像”に真価があったね。
レーティングに左右されてるマスコミにそんな
真価を表現できる勇気も気概もないんだろなぁ。


最近の映像表現にはもう辟易してんですわん。
そんな中でも”引き算”が出来る映像作家に
期待をしてたりはするかな、良い作品観たいね。

 
”エレファントソング”の音楽を担当して出演してる
SION&利重剛といえばコレっしょ。


”私立探偵 濱マイク
  #12 ビターズエンド/利重剛監督